寄稿

コロナにおける当社の対応についてサテマガに依頼寄稿します。
かなり手が加わると思うので原文を以下に記載しておきます。

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愛媛CATVにおける新型コロナウイルス対応について

 

株式会社愛媛CATV 専務取締役 白石成人

 

まずはじめに、新型コロナウイルスによる被害にあわれた方、大きな影響を受けられた事業者の皆様に心からお悔やみとお見舞いを申し上げます。

愛媛県内で感染者が確認されたのは3月2日でした。この頃はどこか、遠い出来事のように脅威としての実感はありませんでしたが、日を追うごとに愛媛県内でも次々に感染者の報告が相次ぎ、集団感染の事例が報告され年度が変わった途端に小中高生の休業が発表されました。当社は創業時から教育には熱を入れて取り組んできました。生徒・児童と一体となった番組作り、全国でも珍しい教育専門イントラネットの提供、遠隔教育の取り組み等。人口減少が進む地方において教育環境の充実こそが地方創生の最優先課題と位置付けビジネス一辺倒とは異なる関わり方を実践してきました。新型コロナはこの教育環境に直撃となったのです。

そこですぐに教育専門コミchである「えひめ・まなびジョン」と医療専門コミch「えひめ・すこやかチャンネル」のインターネット無料配信を決め、加入の有無に関わらず全ての世帯で視聴可能としました。あわせて、普段以上に行き場のない児童が集まることになってしまった児童クラブの要請に応じて50台の当社MVNO SIM入りのタブレットを提供し(実費・有償)、サポートしました。

同時に地元ではこの時点でも外出の自粛の機運はまだ高まっていませんでしたが、万が一に備え急遽テレワークを導入することにしました。特に絶対に止められないコアサービスの運用に関わる技術、放送部門から優先的に実施しました。「全員が出勤停止を余儀なくされても止まらないサービス体制を作る!」をスローガンに自宅からセキュアに接続するためにVPN装置を揃えて加入者管理端末の運用や、内線電話にいたるまでセキュリティと必要な利便性を確保し、4月7日に7都府県で緊急事態宣言が発令される頃にはほぼ7割の出勤削減を実現していました。スタッフ全員にリモート会議用のアカウントを準備してもらい慣れないやりとりから始めましたが、普段以上に活発なコミュニケーションが展開されるようになるまであまり時間はかかりませんでした。放送部では自宅から3密を回避しながら取材に向かい自宅に帰って、編集、データを伝送して送出プログラムをリモートで操作。時にはリモート会議システムを使っての取材にもいち早く取り組み、コロナ騒動以前と比較して番組は減るどころか増えていました。(イベントの無観客配信オファーの増加もあり)

こうした環境変化と同時に、直撃を受けた教育にも積極的にアプローチしました。休校になってすぐ、オンラインスクールの提案を県、市教育委員会に投げかけました。遠隔教育に取り組んできた実績から迅速にこれを起動するためのノウハウがあったからです。同時に我々だけでなく地上波局からも格安での教育番組制作の提案等もあり、さまざまな検討と調整が迅速に行われた結果、両教育委員会は当社と教育支援プログラムの制作、配信を共同で行うことを決めました。決め手は「短時間で大量コンテンツの制作」「リピートも含めて十分な放送活用」「インターネットを活用した配信」「可能な限りすべての児童生徒世帯で視聴可能となるよう」というてんこ盛りの条件にオールインワンで対応可能な唯一の存在であった点です。立ち上げ当初、県教委が52本、松山市教委が34本、先生方が企画立案、出演し、当社で撮影編集をわずか3日間ほどで行わなければなりません。不眠不休での突貫制作で番組を制作すると同時に出来上がったコンテンツから動画共有サイトにアップロードし、県・市それぞれの特別ポータルサイトを当社で立ち上げインターネット視聴に備えました。こうして県が4/27〜、市が4/30〜放送、配信がスタートしました。県のコンテンツは愛媛県内CATV9局でも放送を開始しました。また、コンテンツはこの後も増え続け5/25現在では県のコンテンツ数は132本に達しました。当社では多数あるコミchをフルに活用し、時間帯を変えリピートを積極的に行い多くの世帯でご覧いただけるよう最大限の配慮をしました。未加入世帯はインターネットからすべてのコンテンツが視聴できます。

こうして、なんとか立ち上がった取り組みですが、「すべての児童生徒世帯での視聴機会」という点では最後の課題が残っていました。「インターネット回線も端末も保有していない世帯」のカバーです。すぐさま試算され、県域では526世帯、松山市では10世帯ほどの対策が必要になりました。オファーは通信のできるタブレットでした。折しもGIGAスクール構想によって児童生徒全員分の端末整備が進もうとしているタイミングですが、それを待ってはいられません。両教育委員会はすぐさま各方面(携帯キャリアや端末ベンダー)にあたりました。ところが、コロナ禍において国内でタブレットの在庫が激減し、短時間にその数を取り揃えることに良い返事をできる事業者はいなかったのです。当社もありとあらゆる手段をつくし、なんとか1日のうちに依頼台数の確保に目処をつけ当社にて提供することになりました。とはいえ、500台を超える端末をキッティングせねばなりません。SIMカードを入れて通信の設定にはじまり、ワンタップで目的のポータルサイトへアクセスできるように、また未成年の有害コンテンツ対策など1台の端末あたり約30分程度の時間を要します。しかも世間は緊急事態宣言下のGWです。パートナー会社も休業中とあって、私を含む20人強がテレワークの自宅に持ち帰り、休日返上でキッティングにあたることにしました。作業中はリモート会議をつなぎ、不明な点や次々に発見される想定外の問題にリアルタイムに対処しながら。その結果、GW明けには規定台数すべてを取り揃え愛媛県内に発送されました。そしてこの努力は愛媛県知事のコロナ会見においても「愛媛CATVとコラボしてすべての児童生徒世帯の視聴環境を用意した」という発言で報われました。また同時にこれまでどんなにアピールしても十分な手応えを感じることができなかった「地域での通信事業者(特に無線)としてのプレゼンス」が一気に向上したのです。その後も大学、短大、他の自治体機関からの緊急用の回線、端末オファーは増え続けています。GIGAスクール関連の相談、商談も一気に増えました。また、自宅待機時間が長くなったことにより地域BWAの利用申し込みも通常月の2倍強に増加しました。はからずもこれまで主張し続けてきた地域における地域(無線)通信事業者の強みが実証される機会となったことを実感しています。

放送のみならず、無線通信までサービスに加わったことで地域の全世帯へのアプローチが可能になりました。これは10年ほど前までは到底考えられなかったことです。地域ケーブルとしての「小まわりの良さ」を残しつつプラットフォームとしての「網羅性」が加わったことにより今回の結果につながりました。ケーブルテレビとして無線に積極的に取り組んできて本当によかったと感じずにはいれません。

コロナウイルスという未曾有の危機に際して様々な価値観が壊れ、世の中は変化を余儀なくされました。放送においても通信においても既存の「マスの価値観」だけでなく「ミニの強み」が市民権をようやく得始めるきっかけができた、そんな感覚を覚えています。こうした風がアフターコロナに向かって、そしていよいよ到来するローカル5G時代にケーブルの地域における重要度をさらに押し上げるエネルギーになると確信しています。

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